Yukiko Yanagida's blog

柳田由紀子(やなぎだゆきこ)=むかし新潮社の編集者、いまノンフィクション作家、在ロサンゼルス。『宿無し弘文ースティーブ・ジョブズの禅僧』(集英社文庫)で第69回日本エッセイストクラブ賞。「文藝春秋・電子版」にて、伝記「誰も知らないジャニー喜多川」連載開始。米国人の夫と二人暮らし。家事もけっこうまじめにやってます。

私の好きな店TOP5【悲報/店じまい】第2位「はじめて」(呑んべ横丁)

【悲報/店じまい】「はじめて」のママが急逝。店じまいしてしまいました。悲しい。限りなく昭和だったバーにさらば! ご冥福をお祈りします。
「はじめて」にはじめて行ったのは、2年前の春のことでした。  それまでに、呑んべ横丁で入ったことがあるのはおでんやだけ。他の店にも行きたいけれど、なんだかちょっと怖いよなぁと思いつつ、ある夕方、私は横丁に足を運びました。
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 すると、ひとつのバーからスレンダーなママがひょこっと出てきました。  思わず、 「あまりお金がないんですけど、飲みたいんです」  と言うと、 「あ、そう。うちはね、酎ハイ一杯500円、ビール一本900円、つまみが300円」  と、極めてクリアなお返事。  ママがちょい西田佐知子風(ちょいね。過度の期待禁物)だったことにも背中を押されて、思い切ってそのバーに入りました。それが、私と「はじめて」の出逢いです。あれ以来、何度「はじめて」を訪ねたことでしょう。
「はじめて」は、なんといっても店の構造がすごいです。あえて詳細は記しませんが(自分で行って確かめてネ)、ほほぉ〜、こういうのもありか〜っていうか、なんつーか。それから、店の構造と同じくらいママがすごいです。ほほぉ〜、こういうのもありか〜っていうか(笑)。ママのかったるい風情、”覇気のなさ”がたまりません。良くいえばアンニュイ(過度の期待厳禁)。 「はじめて」は、カウンター5席とテーブル1卓のみの小さなバーです。お通し(300円)は出ますが、他にこれといった食べ物メニューはありません。また、カラオケ(1曲100円)もあるので時に歌がうるさいこともあります。それでも足が向かってしまうのは、やはりママ独特の“覇気のなさ”に惹かれる故でしょう。
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 しかし、“覇気なし”とはいえ「はじめて」のママはプロフェッショナルです。実は私、大震災の数日後、不謹慎とは思いつつ「はじめて」で飲みました。立石はもとより、都心部でも多くの店が閉じた震災直後にもかかわらず、「はじめて」だけはちゃんとオープンしていました。肝が据わっています。だてに、「はじめて」なんてエロな店名をつけちゃいません。  その夜、私とママは余震で揺れる中、テレビの震災速報を眺めながら黙々と杯を重ねたのでした。
□「はじめて」
住所=立石7-1-6
電話:03-3691-8060
営業時間:訊いておきます。定休日=日曜、祝日。
メニュー:おつまみ=¥300、酎ハイ=¥500、ビール=¥900