2016年03月13日

世界の温泉:ツー・バンチ・パームズ(Two Bunch Palm)/砂漠の高級温泉は、〈掛け流し〉というより〈たれ流し〉の鷹揚さ

 砂漠の一本道で車を走らせながら、「今度こそは」と私はつぶやいていた。目指すデザート・ホットスプリングス(カリフォルニア州)は、その名の通り温泉が湧く砂漠の街。私が住むロサンゼルスからは東にほんの2時間だから、寒中にひと風呂浴びるには絶好の地だ。
 だが、過去ここに来る度に私は落胆していた。いわく、湯温が低すぎ、不潔、子どもが多すぎてやかましい‥‥。
 開拓者たちが、デザート・ホットスプリングスの温泉を発見したのは20世紀初頭のこと。次第に温泉を利用したホテルや病院が作られ、今では温泉付きホテルが百軒以上もあるという。中には「日帰り温泉可」もあり、安いところで7ドル程度。
 思えば過去の失敗は、この手の安湯に入っていた故と觀念した私は、今回、奮発して最高級スパホテル「ツー・バンチ・パームズ」(Two Bunch Palms)を訪れることにした。お値段、実に95ドル。いいえ、宿泊費ではありません、日帰り温泉料金です!

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 デザート・ホットスプリングス、「ツー・バンチ・パームズ」の源泉掛け流し露天大浴場。photo/ courtesy of Two Bunch Palms

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 1970年代のデザート・ホットスプリングス。ビルボードが「温泉の街」を宣伝。有名リゾート地、パーム・スプリングスからは車で20分弱。
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 露天風呂エリアの注意書き。静寂を保つため、敷地内は18歳以下の入場禁止。

 86年の歴史を誇るツーバンチの源泉は74℃。それを、
「混ぜ水せず、52℃まで冷ましてから露天大浴場に流します。浴槽は2つで、熱い方が40℃、ぬるいのは36℃。湯温が低くなったら源泉を足すシステムで、1時間おきに全湯が入れ代わる計算」
 と、説明するのは広報のケイティ・カマレナさん。
 つまりは〈源泉掛け流し〉なのだ。温泉分析表によれば、「ナトリウム・カルシウムー硫酸塩・塩化物・炭酸水素泉」。日本の法師や四万、玉造の各名湯に類する泉質である。硫黄泉のようなパンチはないが、その分やさしく、切り傷、やけど、動脈硬化に適応症がある。

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 ふた株の大きな椰子の木が、ツー・バンチ・パームズのシンボル。開拓時代、この木を発見した人々は砂漠に水があることを察したという。

 早々、椰子に囲まれた露天の岩風呂に浸かると、無色無臭ながら温泉特有の滑らかさと重みがうれしい。40℃の湯で温まっては、36℃で冷ます。上機嫌で2つの浴槽を行き来していたら、時折、ゴーと音がして熱い源泉が滝のように流れて来た。ふと、浴槽の縁を覗けば、湯がドボドボと惜しげもなく外の小川に捨てられている。「循環なんて一切なし」の潔さだ。

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 風呂上がりに広い敷地を散歩。点在する小川や噴水に手を入れたら、ちょうど良い湯加減だった。そう、すべて温泉なのだ。日本なら、敷地中に浴場を作って「全△の湯」なんて宣伝をするだろうに、なんと鷹揚な! ここまでくるともう〈掛け流し〉と言うより〈たれ流し〉である。
 いかにも南カリフォルニアらしく鷹揚な名湯、ツー・バンチ・パームズ。95ドルはちと高い気もするが、1日いれば充分元を取れるか、と。

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 77エーカーの敷地には他にテニスコート、プールなど。また、ヨガ他のクラスも開催。日帰り温泉でもプールなどの施設を無料で使えるし、クラスにも無料で参加できる。

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 いたるところに温泉が! 噴水まで温泉とは。思わずその場で脱いで真っ裸で浸かりたい欲望を抑える。温泉は、鬱に効くといわれるリチウムをたっぷり含む(240mg/L)。弱アルカリ性(pH8.4)なので美肌効果も。なお、ツー・バンチ・パームズは、ロバート・アルトマン監督の『ザ・プレイヤー』の舞台にもなった。

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 客室は離れスタイル。料金=キングベッド2人使用で季節により$239〜$309。他にスィートルームも多数。残念ながら客室のお湯は温泉ではない。

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 エステ各種あり。泥パックは温泉を使った自家製だ。photo/ courtesy of Two Bunch Palms



Two Bunch Palm

address: 67425 Two Bunch Palms Trail, Desert Hot Springs, CA92240
phone: 760-329-8791
日帰り温泉=$95.00(要予約)
バスローブ、バスタオル付。ドライアーあり。水着着用。






 
 左/やや読みにくい構成ながら、アメリカ西海岸の各温泉を意欲的に取材した『アメリカ西海岸温泉紀行』(中山幸男、ジェフ・クラーク著、TOTO出版)。ここに紹介されている「デザート・ホットスプリングス・スパ」は、いくつもの温泉プールがある大型ホテル。温泉が清潔でないので、私はおススメしません。ただし、客室内のお湯も温泉なのは秀逸。右/ヨーロッパの温泉を紹介した名著、『西洋温泉事情』(池内紀他著、鹿島出版会)。










posted by 柳田由紀子 at 17:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 世界の温泉 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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