2015年10月21日

魚屋のない町、伊根(京都府)の舟屋、「与謝荘」に泊まったよ

 あれは数年前。福井駅の待合室で周辺案内のブックレットを見ていたら、大変郷愁を誘う写真に出逢いました。

伊根の舟屋 


 その写真は、↑こういった感じのものでした。そして、そこには「伊根の舟屋」と書いてありました。
 説明には他に、「伊根湾沿いの水際ぎりぎりに約230軒の『舟屋』が建ち並ぶ。『舟屋』とは、1階が舟のガレージで、2階が居室になっている建物のことで、国の重要伝統的建造物群保存地区に選定されている」。
 国うんぬんはどうでもいいのですが、写真に大変惹きつけられました(それにきっと魚もおいしいだろうし)。あれから数年。今回、舞鶴に行った足で、ようやく伊根を訪ねました。

伊根の舟屋
 上の写真と同じ場所から撮った明け方の伊根湾。京都の北、丹後半島に位置します。

伊根の舟屋
 夕暮れの伊根湾。舟屋は、江戸中期頃から造られ始め、明治から昭和初期にかけ、徐々に現在のような木造2階建てになったといいます。

伊根の舟屋
 だいたい同じ場所から撮った昼間の伊根湾。

伊根の舟屋
 宿泊先、与謝荘の夕食。どれもこれも、文句なくおいしかった。「カニはこの辺のじゃなくてカナダ産」と宿の人。「正直ですねえ(笑)」「だって嘘ついても仕方ないですから」。良い人たちだ。

 伊根の舟屋
 夕食(1泊2食ひとり13,000円のコース)には、こんなお刺身盛りも(2人前)。お頭付きはアコウ鯛。あまりのおいしさに、同行者との会話も途切れ無口になりました。




 伊根町には、魚屋さんが1軒もないそうです。それは、みんな、漁港や漁師から直接魚を買うからとか。なんと!
 そうそう、伊根は寅さん映画の舞台にもなりました。ヒロインはいしだあゆみ。あの頃のいしだあゆみ、きれいだったなあ。1982年に撮影されたこの映画で、伊根は、時代から取り残された漁村といった風に映っています。しかし現在は、原風景を残しながらも洗練された再構築が施されていて、なんというか、俗化されていない倉敷といった感じ。ひとり旅のお嬢さんもちらほら。
 
では、まず伊根への道。

伊根の舟屋
 伊根に行くのは、はっきり言って大変です。ですが、ローカルな列車やバスから若狭湾や伊根湾が見えて素晴らしいです。行き方=京都丹後鉄道で天橋立駅か宮津駅へ、そこから丹後海陸交通・伊根線バスで約1時間。



京都丹後鉄道
 京都丹後鉄道の路線図(クリックすると拡大します)。私は西舞鶴から天橋立に入り、帰りは天橋立〜豊岡〜京都に抜けました。豊岡〜京都間は、途中から桂川が見えてこちらも絶景。なお、天橋立〜豊岡間の峰山は京料理の料亭、「和久傳」発祥の地です。

京都丹後鉄道
 京都丹後鉄道の床はクラシックな板張り。いい雰囲気です。


伊根の舟屋
 鉄道やバスから若狭湾や伊根湾が見える。とくにバスは、道路と海面の高さがほぼ同じ。湾沿いのくねくねとした細い道を進んでいると、突然、ふっと手が届きそうな位置に海景色が。私はこういうところに来たかったんだ!と、何度もため息をつきました。
 
ここからは、私が泊まった与謝荘の写真。

与謝荘
 外観。向こうが伊根湾。一般に舟屋では、道路のこちら側(山側)にも建物があり母屋になっている。

 伊根には、舟屋の宿、漁師の宿、温泉旅館などの宿泊施設があります。舟屋の宿や漁師の宿には、1日1組限定のところも多いです。そういった宿は、主人とウマが合えばいいのですが、まかりまちがってそうでないとかなりやばいです。与謝荘=部屋数8、料金=11,000円〜、湾が目の前、舟屋、ウエブで見た内装がモダン&清潔、電話の応答=感じ良し。そんな観点から選びました。
 その結果−−着いたその日に台風が接近、翌日は台風の真っ只中と、天候には恵まれませんでしたが、大変良い時間を過ごすことができました。

与謝荘
 フロントまわり。右がフロント、客室は奥の階段を上がったところ。1階と2階に客室。舟屋は、間口が狭く奥行きが深いのが特徴。

与謝荘
 1階廊下。廊下正面に伊根湾。両脇に客室。

与謝荘
 上の写真を反対側から撮影。突き当たりが入口。

与謝荘
 泊まった部屋は、1階のウォーターフロント、ベランダ付。湾の反対側の舟屋群がバッチリ。窓の下には旬の魚がいるわけで〜。

与謝荘
 部屋は狭いです。6畳だったかな。でも、ご覧の通りの絶景に寝るのも惜しく。観念して床に入れば、チャプンチャプンと波音が聞こえて。

与謝荘
 大勢で泊まる場合は、このように部屋の間の襖を取っ払うしくみ。

与謝荘
 2階の部屋からの眺め。舟屋群を上から見下ろす格好です。私は1階からの眺めの方が断然好き。

 客室内をはじめ、与謝荘には1台もテレビがありません。客室に冷蔵庫や電話もないです。

与謝荘
 地下に続く階段。戸を引くと、素晴らしい食事処が待っています。

与謝荘
 ワイドなハメ殺し窓の食事処。カウンターの向こうに舟屋群。そこに、先ほど紹介した料理が出てくるのですから、無口にもなりますわな。

与謝荘
 パティオもあります。ここが唯一の共有スペース。伊根湾の色は、うっとりするエメラルドグリーン。

与謝荘
 お風呂は狭いですが快適。シャンプー、石鹸あり。お湯は温泉ではありません。入浴は22時まで。朝はシャワーのみ。

与謝荘
 お風呂場の脱衣室。やはり狭いけど清潔。ドライヤーあり。お風呂場以外に洗面が2台。そこにもドライヤーあり。なお、トイレは男女兼用で数も限られますが、ほぼ満室にもかかわらず、なぜか不自由はしなかったです。

与謝荘
 朝食。魚は無論おいしかったです。コーヒーが無料だったのもうれしかったな。

IMG_5934.JPG


 1泊だけの与謝荘でしたが、満喫、満足しました。




 ただし! 残念だったのは、台風の只中にもかかわらず10時のチェックアウト後、バスの時間までの約30分、パティオにもいさせてくれなかったことですね。「伊根浦公園(写真上)で待つしかないです」「公園には屋根のある建物があるのでしょうか?」「いいえ、ありません」「近くに喫茶店とかは?」「ありません」。あちゃー。
 伊根浦公園は、「伊根」バス停すぐそば。伊根湾の一番奥に位置するので、舟屋を間近に見ることができるヴューポイントです。

伊根の舟屋
 伊根浦公園から舟屋群与謝荘のある側)を撮影。まあ、台風の中放り出されたからこそ、こんな写真も撮れたわけですが。

 伊根には、江戸時代の舟屋や伊根湾巡り遊覧船、地元漁師による海上タクシー、レンタルサイクル、地元産の筒川そば、地酒の向井酒造、それに浦島神社などがあります。しかし、台風のためすべて断念しました。それでも行って良かったと思うのは、なぜだろう? 風景? 海の幸? 郷愁誘う漁村? 残したい日本? うーん、そういうのが混じった感じ。
 なお、松本清張の『Dの複合』に、「浦島譚(たん)」には、「海洋に対する海人族の意識が強く見られる」とあります。浦島太郎伝説の浦島神社がこの町にあるのもむべなるかなです。




WATER FRONT INN 与謝荘
京都府与謝郡伊根町平田507
丹後海陸交通・伊根線、バス停「伊根」下車、徒歩5分
電話/0772-32-0278
料金/11,000円〜
予約/電話のみ
チェックイン/16:00、チェックアウト/10:00

 伊根の舟屋
 台風のため伊根〜天橋立間の遊覧船(少し手間はかかりますが、伊根には船とバスを乗り継いで行く方法もあるんです)が欠航。でも、他の海路が運行しているかもと、とても親切に船会社に電話までしてくれた丹後海陸交通バスの運転手、神谷さん。ありがとうございました。

木津温泉
 伊根の後は、また丹後鉄道に乗って、天橋立から6駅先の夕日ヶ浦木津温泉で途中下車。大正時代の建物が残る「丹後の湯宿 ゑびすや」に逗留しました。松本清張が『Dの複合』を書いた宿です。木津は京都で最古の温泉地。お湯は、柔らかな弱アルカリ性単純温泉。
posted by 柳田由紀子 at 06:16| Comment(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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