2014年09月22日

世界の温泉:そうだったのか、バーデン温泉(スイス)!

 スイスには、アルプス山系やジュラ山系の地層から湧き出る温泉が20以上もあるといいます。なかでも、国際空港のあるチューリッヒから急行列車で15分のバーデン(湯の意)は、スイス湯治最高峰の誉れ高く、中世から人々はこの谷間の街で温泉逗留を繰り返してきました。

 バーデン/スイス


 チューリッヒ〜バーデン間は、列車が頻繁に往復しています(季節にもよりますが約1時間おき)。 バーデン駅は、鉄道王国スイス、最古の鉄道駅(1847年〜)。この駅のすぐ前を流れるのがリマート川で、川沿いの約20カ所から源泉が湧き出ているらしい。しかし意外にも、川岸の風景は中世スイスというより、むしろ日光鬼怒川温泉。想像していたより、うんと庶民的でした。

バーデン/スイス

 リマート川に沿った遊歩道を北に10分ほど歩くと、源泉が集中する古代ローマゆかりの「クア広場(Kurplatz)」(ローマ人、本当に温泉ずきですね)に突き当たります。ここには、館内に温泉のあるホテルや共同湯(日帰り温泉)が集まっています。

「白いエプロンをかけたメイドがいる高級ホテルから、現代風に洗練されたスパ、それに共同湯−−どこも良いけれど、屋外に温泉があるのは日帰り温泉の『テルマル・バーデン(Thermal Baden)』だけ。それに、あそこは入浴料も手頃ですよ」と、駅前の観光局。そこで、私はテルマル・バーデンに行くことにしました。

バーデン/スイス


 コンクリート打ちっ放しのシンプルな建物に入ると、かすかな温泉の香りと、あまり愛想の良くないスタッフが淡々と迎えてくれました。大人2時間=17.80スイスフラン(約2,500円。タオル付)。サウナは別料金です。

バーデン/スイス
*温泉分析表。クリックすると拡大します。

 温泉は、食塩、硫酸カルシウム他、各種のミネラルを含み、温度は46.5度。しかし、実際には36度に保たれているので少々肌寒い。また、残念ながらここは水着着用ですし、湯船といったものはなく、屋内外に広いプールがあるだけなので、一見したところ気のきいた市民プールといった感じです。

バーデン/スイス


 私は正直、「な〜んだ、スイスの最高峰ってこの程度か」と、やや落胆しました。ところが、しばらくするとプール全体に「本気」の気配が漂っていることに気づきました。人々が無駄口をきかず、温泉に身を沈めて身体の声に耳をすましているーーその静寂が醸し出す「本気」。
 一方、館内には時折「ポロン、ポロン」というやさしい音が響きます。が、このポロン、ポロンの意味がわかりません。私は不思議に思いながら、屋内外のプールを行ったり来たりしていました。

バーデン/スイス
*アクアエアロビ教室も開かれていた。

 1時間経った頃でしょうか。大柄なスイス婦人が、ズンズンズンと水をかき分け私のもとにやって来ました。そして、自分の二の腕を掲げるとバンバンバンと叩いて、今度はその二の腕をプールの壁際に沈めるのでした。??? 大いに疑問符がよぎったのですが、ドイツ語はできないし、大柄なおばさんも怖そうだったので、私はあやふやにうなづくのみでした。

 バーデン/スイス
*ゆったりとくつろげるガーデンもあり。

「ポロン、ポロン」
 そうこうする内に、また例の音です。と、同時におばさんが再びズンズンズンと水をかき分けて、私のそばから去って行きました。その顔には、「あんた、まだわかってないのね」と書いてありました。
 ??? またまた疑問符がよぎります。いったい、こ、これは……。首を傾げながら周囲を見渡した私の目に映ったのはーー人々が一斉に壁に沿ってプール内を移動する、〈ストップモーションのような光景〉でした。

 そうだったのか、バーデン温泉!

 ドイツの名湯、バーデン・バーデンにある「フリードリヒ浴場」では、湯船に浸かる時間が掲示、指導されています。同様に、ここでは「ポロン、ポロン」が「時間&移動」を知らせていたのです。







〈ストップモーションのような光景〉を眼にした私は、確認のために人々がとどまる地点を何カ所か回ってみました。と案の定、それらの地点では壁際から気泡が出ており、さらに地点ごとに気泡の位置や角度、強弱が違うのでした。つまり「ポロン、ポロン」に合わせて、プールの壁際を一周することで、全身マッサージが完了するのです。

 うーん、バーデン温泉、深い。ドイツ語圏、やっぱり決まり事が好きだ。これで、最初に感じた「本気」な雰囲気も解せたというものです。
 しかし、遅すぎました。いくら36度の低温でも1時間以上つかっていたので、私はもう限界。温泉プールから出るより他ないのでした。

バーデン/スイス
*美しき川沿いの遊歩道。街のあちこちに清水の飲泉場がある。

 テルマル・バーデンを出ると、目の前に工事現場がありました。ローマ浴場の跡地で、再オープンを目指している由。
 工事現場を後にすぐ裏にあるクア広場に向かうと、飲泉所からこんこんと温泉が流れていました。乾いた身体に一気に飲み干します。横にいたネイティブらしきおじさんも、一緒にゴクン。このおじさん、片手に温泉、もう一方の手にはしっかりと煙草を挟んでいます。ゴクンしてはプカプカ。プカプカしてはゴクン。
 いわく、
「バーデンの源泉を飲んでいる限り、煙草の害も帳消しになる」
 本当カネ?!

バーデン/スイス


*バーデンの行き方=チューリッヒから急行列車で約15分。列車はおよそ1時間おきに往復。


テルマル・バーデン(Thermal Baden)
Address: Kurplatz 1 CH - 5400 Baden Schweiz

phone: 056 203 91 12
時間: 7:00〜22:00。季節や曜日によって異なる。詳細は下記HP。

*その他の温泉施設
高級湯治ホテル/Atrium-Hotel Blume Baden 
 バーデン/スイス

現代的なスパ/Nuvum Spa
 バーデン/スイス


posted by 柳田由紀子 at 17:48| Comment(0) | 世界の温泉 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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